残すもの、変えるもの
2025/07/31 商売のヒント
孔子の「義を見てせざるは勇なきなり」という言葉を、一度は耳にしたことがあるでしょう。正しいと分かっていても踏み出せないとき、まさにこの言葉が胸に刺さります。やれDXだAIだと世間が騒ぐ中「うちは昔ながらのやり方で十分だ」と思われる方もきっと多いと思います。確かに長年、培った顧客との信頼関係は宝物です。
しかし『三国志』の名君・劉備(りゅうび)を思い出してください。彼は伝統的な「仁義」を重んじながらも、時代の変化に合わせて天才軍師・諸葛孔明(しょかつこうめい)という新しい力を迎え入れました。諸葛孔明は劉備の右腕として数々の知恵を授けた人物です。劉備が志を掲げ、諸葛孔明が実現を目指した関係性といえるでしょう。そして、今の商売で諸葛孔明の役割を果たしてくれるのが「テクノロジー」かもしれません。AIで顧客管理をすれば長年のデータがより確かなものになり、クラウドで営業情報を共有すればチームの連携が格段にスムーズになるでしょう。人間味を失うのではなく、むしろ「人」が本来の力を発揮できる環境を整えるためにテクノロジーを使う。
大げさな変革でなくても、社員のスキルとデジタルツールの小さな組み合わせから案外、大きな改善が生まれるものです。変化を恐れず、しかし人を大切にする。良いものは残しながら新しい武器も使いこなす。これは「人徳の君主」と呼ばれた劉備のやり方であり、現代の商売にもいかしたい英知です。
時の名将が現代に生きていたらスマホを使いこなしていたか――。本質を見抜く目があれば、時代を問わず新しいツールを味方につけるのではないかと想像します。