つぶやく税理士

商売の神髄は「和して同ぜず」

  2024/08/30    商売のヒント

仕事上で意見が割れたとき、あなたはどう対処しますか?孔子の『論語』にこんな一節があります。「君子和而不同(君子は和するも同ぜず)」。これは「人と協力することはあっても、人の意見や態度にむやみやたらに同調しない」という教えです。この簡潔な一節には、商売の神髄ともいえる深い英知が秘められています。和するとは調和を保つこと。同ぜずとは、自身の個性を失わないこと。この、一見相反する2つの要素のバランスこそが、商売の成功へとつながる道だと思います。たとえ少人数の会社でも、時には意見の食い違いから衝突することもあるでしょう。しかしその中で調和を見出しつつ、各々が自身の独自性を失わない。そう簡単にはいかないものではありますが、そこに価値ある対話が生まれるのは確かです。

調和を保つとは単なる同調ではありません。それは相手の立場を理解し、尊重する姿勢です。経営者といえどもチームの一員と捉えれば、全体の調和を乱さない配慮を持ちつつ、同時に自分自身の信念や創造性を失わない。この絶妙かつ微妙なバランスを保つことこそが、真のリーダーシップだと孔子は述べています。

調和を重んじるあまり自己を殺してしまったり、逆に自己主張が強すぎて周囲とのあつれきを生んだりすることもありますが、その狭間で揺れ動くのが経営者かもしれません。だからこそ孔子は「和して同ぜず」を「君子」の特質としてあげ、理想の姿として私たちに示したのでしょう。日々の決断の中で調和と個性のバランスを取り続ける。その積み重ねがやがて企業文化となり、会社の個性となっていくのではないでしょうか。